インスリン過剰による低血糖症は、成人では糖尿病の治療に関連する医原性のものが圧倒的に多く、そのに次インスリノーマ(膵臓のインスリン産生細胞からできた腫瘍)が続きますが、膵島細胞症は腫瘍もインスリン抗体もないのに、膵臓のインスリン産生細胞が過剰にインスリンを作るようになる疾患です。
成人になって発症することもあり、低血糖により、空腹感、倦怠感、震え、発汗などが起こるほか、意識障害や、けいれんにいたることもあります。
治療として頻回食が行われますが、症状が回復しないことも多い疾患です。
今のところジアゾキシドの内服以外には保険で認められている薬剤がなく、内科的な治療の手段が少ないため、重症の場合は膵臓を切除したりすることもあります。
小児慢性特定疾病の内分泌疾患、No.78先天性高インスリン血症及びNo.79その他高インスリン血性低血糖症という病名で、対象疾患として制度化されていますが、成人期に移行すると制度から外れていくのが現状です。
病因は小児も成人も同様に、膵β細胞の一部または全部からインスリン過分泌をきたし、難治性の低血糖をおこす病気です。
発症時に適切に治療を行わないと、けいれんや意識障害を起こすだけでなく、低血糖による神経後遺症につながることもあります。
小児には研究班があり、先天性高インスリン血症診療ガイドラインもつくられ、診断・治療に関する標準化が進められています。
小児も内科的治療や外科治療で血糖値の安定化を図りますが、長期の管理が必要な場合、血糖測定器やジアゾキシド投薬治療、サンドスタチン注射・グルカゴン注射など行い患者も家族も24時間、油断できないのが実情です。
尚、ジアゾキサイド不応性の先天性高インスリン血症に対して、現在保険未承認であるオクトレオチド(サンドスタチン)を持続皮下注射ポンプを用いて血糖安定化を行う治療もあります。
【成人の場合】 経験した低血糖の症状
・冷汗がでる。
・集中力が低下しできることができない。
・思考力が落ち考えがまとまらない。
・視界に変化、光が白くにじんでかすむ。
・動悸がはじまり、脈が乱れる。
・脱力感・全身のちからが抜けてくる。
・悪夢や浅い眠りで目覚め、寝汗
・食事や甘いものを食べると治る。
【新生児や小児期の場合】
新生児や小児期の発作は文献から
意識障害、けいれん、無呼吸、顔面蒼白、昏睡、ボーとするなど
ご家族から寄せられた症状
・機嫌が悪い
・手足が冷たい
・朝や昼寝後もすぐに寝てしまう
・しゃべらなくなる
・低血糖時に糖分をとるとみるみる動き出す、よくしゃべるりだす。
・薬(オゼックス)の副作用により低血糖発作(肺炎で使用)
〇 新生児、小児
一過性患者 約17,000人出生に一人
持続性患者 約35,400出生に一人
(厚生労働省科学研究全国調査)
〇 成人患者
現在未集計
各医療機関に1~2名推定50名程度
(小児研究班先生より)
〇 ジアゾキシド治療者
200〜300名
(平成17年未承認薬使用問題検討会
資料8-3より)
〇 サンドスタチン注射
(研究事業より)
〇 研究班情報
研究班 分担研究先天性高インスリン血症班が全世代対象の全国実態調査を開始しました。
研究班代表仁尾先生のウエーブサイトとリンクしました。
患者では説明できない専門的な解説も閲覧できるようになり、先天性高インスリン血性・小児から成人移行期・成人発症膵島細胞症の切れ目のない研究が進んで行くことを願っています。
小児期発症の希少難治性肝胆膵の移行期を包括し診療の質の向上に関する研究
東北大学小児外科内
先天性高インスリン血症 研究班
先天性高インスリン血症診察ガイドライン 平成 28年10月1日
先天性高インスリン血症について 同研究班先生のhp
ma16takahashi@yahoo.co.jp
TEL 090-6426-3111